障害者向けグループホームの運営会社「恵」 不祥事まとめ 3






 





職員は中部地方のホームに勤務。入社数カ月後に勤務表の改ざんに気付いた。自治体職員が調査のためにホームを訪れた直後、机の上の勤務表を見ると、一度も夜勤をしたことがないのに月に数回入ったことになっていた。職員ではない人の名前も書かれていた。 夜間の人員を多く配置すると、自治体から事業者への報酬が加算される規定がある。「知らない間に名前を使われ、不正に加担させられていることを知って怒りを覚えた」と振り返る。

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事業者が自治体に報酬を請求する際、入居者や家族が押印やサインをしたサービス提供記録が必要だが、職員らが同じ名字の印鑑を買って押していたとも証言。恵の幹部からは「自治体の職員に何か聞かれても『知りません』と答えるように」と言われたという。「もしホームが指定取り消しになれば、入居者が行き場を失うかもしれず、告発できなかった」と涙ぐんだ。



入居者の大半は重度の障害があり、恵のホーム以外に受け入れ先がない人も多い。食材費の過大徴収などが報道された後も出ていった人はいない。「自分が投げ出すわけにはいかないから仕事を続けている」と話し、不正を強いた幹部への調査や対応を強く求めた。



グループホームの入居にあたっては、事業者が家族や入居者の同意を得て、利用計画書を作成。これを基に、厚労省自治体は報酬(給付費)を事業者に支給する。だが、川崎市内のホームでは、同意を取らずに計画書を作成し、報酬を受給。同市は不正受給の疑いもあるとみて調べている。

また、名古屋市のホーム「ふわふわ北」では2023年3月までの1年半に、夜間の職員配置数を実際より多く申告し、報酬を過大に受給していたことが同市の調査で判明。ほかにも、入居者5人に対し職員1人の職員配置だったが、4人に1人の割合だと申告し、報酬を過大に請求していたことも確認された。

同市は、恵が運営する訪問看護ステーション「MGK24」(同市緑区)の看護師が恵の事業所を訪問した際、実際より多い診療報酬を受給した疑いがあるとみて調べている。報酬が加算される夜間や早朝に看護師が訪問したような虚偽の記録が作成されていたと元職員が本紙に証言している。

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食材費の過大徴収では、実際に集めた額の3分の1程度しか配分していなかった例が明らかになった。愛知県内のホームで暮らす男性は3月に「あまりにわびしかったから」と夕食を撮影。おかずはコロッケ半分と春巻き、サトイモ2個。意思疎通が難しい人もいて「どんどん痩せていった人を見た」と話した。